尿失禁からアルツハイマー、肝臓病までを治療する万能薬がなんと脂肪細胞の中に潜んでいた。このスーパー細胞はASC細胞と呼ばれ最新医療として注目されて様々な臨床研究がなされている。サイエンスZEROではこの脂肪細胞からまれたASCという幹細胞を詳しく紹介していました。
ガンで傷ついた傷も修復
悩める女性を救ったケース
大阪の女性、乳がんになり乳房の一部を取り除く温存手術を受ける。しかし、手術の傷が残った。傷のくぼみがやはり気になる。胸の形をシリコンでカバーするのも困難だった。脂肪を注入しても長くはもたない。
そんな課題を解決したのがこのスーパー細胞のASC。
胸のくぼみにこのASCと脂肪を混ぜたものを、胸の傷に注入する。鳥取大学では臨床研究が行われていた。
それから3ヶ月、乳房の形も順調に元に戻っているという。違和感も全くなく痛みもないという。
体だけでなく心の状態も良くなったという。
傷が修復した理由
手術ではASCと脂肪細胞を一緒にくぼみに注入していた。
というのも、注入された脂肪はマクロファージによって敵とみなされ攻撃される。そこで、ASCはサイトカインという物質を放出して敵じゃない事を知らせる。これによってマクロファージは攻撃をやめてくれる。
注入された場所には血管がないため脂肪細胞は長くはもたない。この不都合をASCが血管新生因子というたんぱく質を出して血管を作る。
尿失禁や肝臓病、アルツハイマーにも効果が期待
推定患者数400万人はいるという腹圧性尿失禁、括約筋や平滑筋の機能が弱くなることで起こる。脂肪から取ったASCを尿道の周囲に注入し筋肉そのものを回復させようという試みもなされているという。
臨床研究では11人に手術、8人が改善、1人は完全に治った。
さらに、ラットの実験ではASCが平滑筋に変化していた。つまり筋肉に変わっていた。
ips細胞とASC細胞の違い
・あらゆる細胞に分化する。人工的に作られた細胞がips細胞。
・ASC細胞は本来体の中に持っている細胞。つまり自然にあるもので人工的にあるものではない。損傷した組織を修復、細胞を保護するといった働きがある。
他にも様々な幹細胞がある。骨盤の幹細胞、骨髄からの幹細胞等。
ASCのメリット
脂肪吸引で簡単に採取できる。骨髄の幹細胞の1000倍も多く採取することができる。
肝臓病の治療にも期待される
肝臓に病気のあるマウスにASCを注入すると生存率が90%までアップした。
肝臓の疾患に対しても臨床研究がなされている。
ASCのメカニズムは、血管に注入されると血液を循環。損傷した細胞のSOSをキャッチすると探査モードになる。場所を突き止めて救援モードに変化する。患部に向かい、サイトカインを放出して細胞の修復と再生を助ける。
アルツハイマーの治療にも期待
また、ASCはエクソソームを分泌する、これがアミロイドβを分解する働きがあるという。アルツハイマー病の原因であるアミロイドβを減らすことでその治療に役立つのではないかと考えられている。